産業保健の基本の『ん』:人間関係を構築して信頼される保健師になろう

2025-06-09

産業保健師の基本

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産業保健師として企業で活躍するためには、「会社を知る(き)」「産業保健体制を把握する(ほ)」に続いて、「人間関係を構築する(ん)」ことが不可欠です。
どれだけ専門知識があっても、従業員や関係者との信頼関係がなければ、効果的な健康支援活動は実現できません。

✅ 人間関係構築は産業保健活動の基盤

健康管理の仕組みを整えても、従業員に活用してもらえなければ意味がありません。
まずは顔と名前を覚えてもらい、気軽に相談できる存在になることが大切です。

🔹 信頼関係を築くメリット

✔ 健康相談が増え、早期発見・早期対応ができる
✔ 健康施策への参加率が向上する
✔ 保健指導の効果が高まる
✔ 職場環境改善の協力が得やすくなる
✔ 業務に必要な情報がスムーズに集まる

✅ 信頼される産業保健師になるための5つのポイント

1️⃣ 自分から積極的に挨拶・自己紹介をする

☑ 着任時に関係部署を回って挨拶する(部門長への挨拶は必須)
☑ 職場巡視の機会を活用して従業員と会話する
☑ 社内報やイントラネットで自己紹介記事を掲載
☑ 衛生委員会で自己PR(経歴・得意分野・目指したい産業保健活動)
☑ 健康セミナーの冒頭で自己紹介(専門性をアピール)

2️⃣ 相談しやすい環境・雰囲気づくり

☑ 相談室の場所を分かりやすく案内
☑ オープンドアポリシー(在室時は扉を開けておく)
☑ 定期的な「健康相談日」の設定(毎週水曜日午後など)
☑ リモートワーク時代に合わせたオンライン相談の仕組み作り

3️⃣ コミュニケーションスキルを磨く

☑ 傾聴力(話を遮らず、相手のペースに合わせる)
☑ 共感力(「それは大変でしたね」など気持ちに寄り添う言葉)
☑ わかりやすい説明(専門用語を避け、図や例えを使う)
☑ 適切な質問(オープンクエスチョンで話を広げる)
☑ 非言語コミュニケーション(表情・姿勢・アイコンタクト)

4️⃣ キーパーソンとの関係構築

☑ 人事・総務部門との定期的な情報共有
☑ 産業医との事前・事後ミーティング
☑ 部門長への定期的な健康課題の報告
☑ 経営層への健康経営の提案(数字を使って説明)
☑ 労働組合との協力関係の構築(従業員の声を聞く)

5️⃣ 誠実さと一貫性を持った対応

☑ 約束したことは必ず実行する(フォローアップの徹底)
☑ 情報の取扱いに細心の注意を払う(守秘義務の徹底)
☑ 偏りのない公平な対応(特定の部署や個人を優遇しない)
☑ 根拠に基づいた情報提供(最新の医学的知見を学び続ける)
☑ 自分の限界を知り、必要に応じて他の専門家に紹介する


✅ よくある「信頼関係構築」の失敗パターンと対策

産業保健師として活動する中で、信頼関係構築に関するいくつかの落とし穴があります。これらを理解し、適切に対応することで、より効果的な産業保健活動が可能になります。

📉専門用語の多用による壁

専門知識が豊富な保健師ほど、無意識に医療専門用語を多用してしまうことがあります。
健康セミナーで専門用語ばかり使用すると、参加者には「何を言っているのか分からない」と感じられ、徐々に参加率が低下する原因となります。

🔄効果的な対策

専門用語を使う場合は、必ず平易な言葉での言い換えを心がけましょう。図表やイラストを活用してわかりやすく説明することも重要です。また、対象者の知識レベルに合わせた説明を意識し、「これはつまり〇〇ということです」と具体的にまとめることで理解を促します。説明の途中で相手の理解度を確認しながら進めることも効果的です。


📉守秘義務の誤った解釈

産業保健師として守秘義務を遵守することは重要ですが、過剰に解釈すると必要な連携までも避けてしまう危険があります。産業医や人事部門との適切な情報共有ができずに従業員のフォローが不十分になると、「保健師に相談しても何も変わらない」という評判を招きかねません。

🔄効果的な対策

守秘義務の範囲については正しく理解することが重要です。何をどこまで共有できるのかを明確にし、情報共有の際には本人の同意を得る手順を整備しましょう。
「誰と、どのレベルの情報を、どう共有するか」についての明確なルールを作成し、健康情報と業務情報を適切に切り分けることも大切です。また、チーム連携の重要性を従業員に説明し、情報共有の意義と限界について理解を促すことが必要です。


✅ 人間関係構築のプロセス

信頼関係は一朝一夕には築けません。段階的に深めていくことが大切です。

👯 信頼関係構築の4段階

知ってもらう段階(名前と顔を覚えてもらう)
…挨拶回り、自己紹介の掲示、健康セミナーの実施

関わりを持つ段階(業務上の接点を作る)
…健康診断の案内、職場巡視、衛生委員会での情報提供

役立つ存在と認識される段階(専門性を発揮)
…健康相談への的確な対応、わかりやすい保健指導、部署特有の健康課題への提案

信頼される段階(頼りにされる存在に)
…健康問題の早期相談、施策への協力、経営層からの健康経営の相談

✅ 持続的な改善活動につなげるために

信頼関係を構築したら、次は持続的な改善活動を進めていきましょう。

データに基づく現状把握健康診断やストレスチェックのデータを分析し、課題を特定
…トレンドを把握して、根本原因を探る

中長期的なビジョンを設定現状の課題をもとに、改善目標を設定
…経営層と対話し、サポートを得る

小さな成功を積み重ねる大きな変革よりも、小規模な改善を連続的に実施
…成果を可視化して、関係者にフィードバック

✅ まとめ

産業保健師として効果的な活動を行うためには、「人間関係の構築」が不可欠です。

🔹 自分から積極的に関わり、顔と名前を覚えてもらう
🔹 相談しやすい環境づくりと適切なコミュニケーションを心がける 
🔹 キーパーソンとの連携を強化し、組織全体の健康支援を行う 
🔹 誠実さと一貫性のある対応で信頼を築く
🔹 段階的に関係を深め、頼りにされる存在を目指す

信頼関係の構築には時間がかかることもありますが、焦らず着実に進めていくことが大切です。従業員から「あの保健師さんに相談してみよう」と思ってもらえる存在になることで、産業保健活動の効果が大きく高まります。

産業保健の基本「き・ほ・ん」を抑えて、職場の健康づくりに貢献していきましょう!


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